ハワイの自然と空気と、ALOHAをまとったKualoa Ranchのチョコレート
旅の終わり…。トランクの中を整理しながら、お土産に買ってきたチョコレートをひと齧り。口の中に広がる甘い口福とともに、旅の余韻に浸る時間が癖になっている今日この頃。お土産はその旅を象徴するものであるって誰かが言っていたけれど、まさにそのとおり。
今回の旅にそんな余韻を残してくれたのは、オアフ島の北東に位置するクアロア・ランチ(牧場)のチョコレート。映画『ジュラシック・パーク』をはじめ、さまざまな映画のロケ地としても知られるここは、4000エーカーにも及ぶ広大な土地で農作物を育てるほか、エビやカキなど海産物を養殖する古代ハワイの風景を残す唯一無二の場所。そんな地で、カカオが採れるという。そういえば、ここ数年ハワイ産のカカオを使ったチョコレートをちらほら見かけてきた。クアロアのカカオか〜、と期待を胸に早朝、東へと向かった。
フローラルな味わいを生むクアロアの芳醇なカカオ
始まりは10ほど年前、ハワイ大学がオアフ島の5カ所にカカオを植え、リサーチするプロジェクトから。そのひとつだったクアロア・ランチの出来がよかったことから本格的に栽培がスタートした。「クアロアのカカオは、フレーバーがユニークでダークなほどカカオの旨味を感じられるんです」と、農場マネージャーのアイゼスさん。将来的には製造も含め、すべてをここで手がけたいと話す。オアフ島東部の雨が多い気候の中でもいちばん乾燥している谷側のKa‘a‘awa(カアアヴァ)のものはフローラルで、山側のHakipu‘u(ハキプウ)のものはさらに力強い大地の香りも含まれたものだそう。そんな2つを合わせて出来上がったのが〝クアロアチョコレート〞。アイゼスさんはまるで子どもの頰を撫でるかのように、愛おしそうにそっとカカオの実に手を添えては、畑の様子をじっくり見て回っていた。
愛されて育ったカカオから生まれたチョコレートを齧るたびに、ハワイの風と空と、山の緑にふわりと包まれる不思議。む〜ん、恐るべし、メイドインハワイのカカオパワー!
text:Kaori Akazawa, photos:Akira Kumagai, coordination:Maya McCullough, web edit:LeaLea
LeaLea Magazine Vol.55より転載。2019年9月取材・撮影。2020年2月加筆編集。

- 赤澤かおり
- フリーライター&編集者。海の近くで暮らし、ハワイを旅すること、鎌倉や京都を中心に飲んで、食べる、作ることをライフワークとする。ユーズドのアロハシャツをワンピースやサーフパンツ、バッグなどにリメイクするブランド「Aloha Tailor of Waikiki」を主宰。ハワイに関する著書は共著を含め12作。近著に「HAWAIIAN PRINT BOOK」(ちくま文庫)。初の選曲とライナーを担当した、70年代・ハワイアンミュージック・コンピレーションアルバム「Da Aloha Music Mele Through HAWAIIAN PRINT BOOK」も。ハワイでのプライベートな日々を綴ったガイドエッセイ「Hawaii note」が好評発売中。