とにかく食べることが好きで、おいしいものに目がない。旅の間はいつも以上にそのパワ―が増すから我ながら困っているくらい。
先日のハワイ旅の最中にも、とびきりのモノに出合ってしまいました。
それは、グルメなご夫婦が手作りするキャラメル。ひと粒ポンと口に入れ、驚き、思わず一言。「何これ―――!」と、口にしてしまいました。ゆっくりじわじわと口の中でとろけていく優しい感じも、口中を満たすやわらかな甘みも、すべては後から思い返したこと。それより何より、「うわっ、おいしい!」という気持ちがひとまとめになって「何これーーー!」の一言に凝縮されてしまったのです。
はじまりは今から5年前。アメリカ本土に暮らすお母さまを訪ねた際に寄った、サンフランシスコのファーマーズマーケットで購入したキャラメルがおいしくて、また食べたいね、という話からご主人のスティーブさんが一念発起。もともとお菓子作りが好きだったスティーブさん、何度も試作を重ね、さらに素材にハワイのものを取り入れて、味づくりを重ねていきました。奥様ルイコさんの担当は試食とパッケージデザイン。かわいい花柄のパッケージはルイコさんの友人の日本人デザイナーに依頼。中からも外からもじっくりと試作が繰り返されました。
材料はコーンシロップ、水、砂糖、ブラウンシュガー、ハワイ産の塩。それにバターと生クリーム、さらに本物のバニラエキス、マカダミアナッツなどを加えて完成となるのですが、そこまではずっと鍋の前につきっきり。フレーバーにより混ぜる時間と温度が変わるため、バターや生クリームを加えるタイミングは混ぜながら状態を見て決めるのだそう。温度計を常にチェックして、1度でもずれると食感が変わってしまうため毎度真剣勝負で、これを3回やるともうヘトヘト。それをトレーに流し込んで翌日にカットし、包装。そして週に一度だけファーマーズマーケットで販売するというのが、ここ数年のお二人のキャラメル道。
時にはお互いの想いが強すぎてケンカになることも。でもそれも自分たちが心からおいしいと思えるものを生み出すための過程。そう信じてしっかり意見を交換してきた結果、生まれたのがこの味わい。ファーマーズマーケットで二人揃っての笑顔を見ると、このおいしさの理由がわかるはずです。
<2019/06/04の情報です>

- 赤澤かおり
- フリーライター&編集者。海の近くで暮らし、ハワイを旅すること、鎌倉や京都を中心に飲んで、食べる、作ることをライフワークとする。ユーズドのアロハシャツをワンピースやサーフパンツ、バッグなどにリメイクするブランド「Aloha Tailor of Waikiki」を主宰。ハワイに関する著書は共著を含め12作。近著に「HAWAIIAN PRINT BOOK」(ちくま文庫)。初の選曲とライナーを担当した、70年代・ハワイアンミュージック・コンピレーションアルバム「Da Aloha Music Mele Through HAWAIIAN PRINT BOOK」も。ハワイでのプライベートな日々を綴ったガイドエッセイ「Hawaii note」が好評発売中。