太平洋のど真ん中、どこの大陸からも遥か遠く離れたハワイ諸島は、長い長い年月をかけて独自の自然進化を遂げてきた。かつて他の大陸から鳥も虫もたどり着くことのできなかった孤島の楽園には、固有種の植物が繁栄し、ジャムのように熟した果物が、古代の人々の喉を潤していた。
世界中から訪れる旅行者を魅了してやまないハワイ諸島。心も身体も軽やかになれる温暖な気候にフレンドリーなローカルの人々、ショッピングやビーチアクティビティなどバカンスに欠かせない要素がギュッと詰まったリゾートアイランドのもうひとつの顔こそ、そこここに残された手付かずの大自然だ。高層ビルが立ち並ぶオアフ島ダウンタウンの裏山には、熱帯雨林のジャングルに包まれた美しい渓谷が佇み、雄大なコオラウ山脈のトレイルには地球の力強さが眠っている。かつて王族たちが祈りを捧げた海辺のヘイアウでも、伝説の神々の息吹を残す離島の山頂でも、人知れず朝夕ごとにドラマティックな光景が繰り広げられている。
少しの冒険心を抱き、自らの足でそんな大自然へと分け入れば、ハワイ諸島ならではの雄大な景色の中に、感じたことのない解放感と生命力に出合うことができるのだ。自分だけのハワイを探しに、さあ歩き出そう。
1. クリオウオウ・リッジ・トレイル - Kuliouou Ridge Trail -
谷を吹き抜ける風を浴びて、オアフ島東海岸を望むクリオウオウ・リッジ・トレイル
ワイキキから車で約20分。オアフ島の東側、ニウ・バレーという小さな渓谷を縫うように張り巡らされた全長約6.4kmのトレイル。住宅地を抜けた先から始まる小道は、オアフ島の背骨とも呼ばれる標高約550mのコオラウ山脈の尾根まで続いている。頂上近くの急勾配を除いては、緩やかに登り道が続く中級コースだ。渓谷に吹く爽やかな風が、低木の原生林をさらさらと揺らしている。頂上からは、山脈の裾野に悠々と広がる東海岸の絶景を見下ろすことができる。
2. マカプウ・ビーチ - Makapu’u Beach -
クリスタルブルーの海から、全身でパワーを受け止めて
オアフ島最東端、マカプウ岬の下に広がるビーチは知る人ぞ知る絶景スポット。ゴツゴツとした溶岩石の展望台は、トレッキングの装備がなくても気軽に訪れられる絶景ポイントだ。透明度の高い海、そそり立つ深緑の雄大な頂きからパワーがこんこんと沸き出しているかのような力強さ。それもそのはず、沿岸にはヒーリングプールという天然の潮溜まりやヘイアウと呼ばれる神殿が並び、古代ハワイ王朝時代からパワースポットとして大切にされる神聖な場所なのだ。ビーチの片隅には、古代ハワイアンが祈りを捧げたヘイアウもあり、パワースポットとして知られる。
3. ジャッド・トレイル - Judd Trail -
族たちが愛した、憩いの天然プールを目指して
高層ビルが立ち並ぶダウンタウンの山側に広がるヌウアヌ・バレーは、一変して熱帯雨林のジャングルに包まれる。みずみずしい熱帯植物に囲まれたジャッド・トレイルは、かつて王族たちが水浴びに興じたという真水の天然プールに出合える人気のコース。1周約1.6kmと短く、川のせせらぎを聞きながら森の中を歩くなだらかな初心者向けコース。濡れても大丈夫な防水の装備と、虫除けスプレーを忘れずに。
ワイキキからのアクセスは、McCully St.からH-1 Westへ。2.5㎞ほど進みPali Hwy.(61号線)からNuuanu Pali Dr.へ入る。右カーブの先に見える小さなコンクリート橋を渡った右側に、トレイルの入り口がある。ワイキキから車で約20分。
4. マカプウ・ライトハウス・トレイル -Makapu’u Lighthouse trail-
最東端の岬を目指して入り組んだ海岸沿いを歩く
オアフ島最東端のマカプウ岬に立つ灯台近くまで歩いていける人気のトレイル。なだらかな斜面が続く舗装されたコースは、ゆっくり歩いても片道30分ほどの初心者向け。毎年12月から4月ごろにかけてはアラスカからザトウクジラが南下するため、運が良ければ目の前の海でクジラが潮を吹く様子を見ることができる。コース上は日陰がないので、日焼け止めと水分補給用の水筒をお忘れなく。
5. ピンク・ピルボックス・ハイク -Pink Pillbox Hike-
壮大な島の歴史を見守ってきたピンク色の小さな城
ワイキキから西へ車で約45分、多くのハワイアンの居住エリアでもあるオアフ島西部は、いまも昔も変わらないのどかな風景が広がっている。第二次世界大戦時に見張り台としてワイアナエ山脈の中腹に造られたピルボックス(トーチカ)にアクセスできるトレイルは、片道40分ほど。頂上手前に見えるピンクのピルボックスを目印に上がっていくと、オアフ島西海岸全域が見える断崖絶壁の絶景が広がる。
photos : TAKU MIYAZAWA, text : MAIKO HATANO IZON, edit : MIKI SUKA, Web Edit: LeaLea
LeaLea Magazine Vol.52より転載。2019年2月取材・撮影。2019年4月4日加筆修正。