ハワイアンフィッシュポンドをご存じでしょうか。ポンド=池といっても川の水が流れ込む海にあり、海岸線から低い石積みの石垣で区切られている、太古のハワイから今に伝わる自然を生かした養殖池なのです。
写真提供:Paepae o He’eia @paepaeoheeia
全体像はこのような形になっています。石垣は水面より少し高く設計されており、川から流れてきた栄養分豊富な水が海に流れ出す前に、一旦ここで堰き止められるようになっています。
肥沃な土地から流れてきた川の水は栄養素に富み、プランクトンが育つ格好の栄養となるのだそうです。このフィッシュポンドは、もちろんその中で魚も育ちますが、魚たちが育つためのプランクトンを育てることも、その大きな役割なのだそうです。
このフィッシュポンドにはポリネシア文化を継承した、ハワイ特有の水門が設置されています。この水門はフィッシュポンドの水の循環を担っており、人間に例えると呼吸のための鼻や口にあたる部分なのだそうです。
潮位が高いときはここから海水が流れ込み、潮位が低いときにはフィッシュポンド内の水が海に流れ出すため、自然に水が循環します。水の流れと同時に水門から池に小さな魚が引き込まれますが、この中で育って大きくなった魚は水門をくぐれなくなる工夫もされています。
このフィッシュポンドが作られたのはおよそ800年前といわれています。ネイティヴハワイアンの共同生活地域「アフプアア」の一部として盛んに活用されていましたが、西洋化の波に押され、フラを踊ることが禁止されたカメハメハ3世の時代あたりで廃れていったのだそうです。
そんな太古の知恵が息づくフィッシュポンドの修復をお手伝いし、先人たちの知恵を体感できるボランティアに行ってきました。静かな住宅街の先に、そのフィッシュポンドはありました。
まずは大きなテントの下で、半日を共にハワイのために過ごす仲間たちと本日の作業に関する説明を受けます。
足を保護する貸し出しブーツを受け取り、水に濡れても良い準備を整えます。
今日の作業は大きく二つ。ひとつは、ハワイの水辺で勢力を拡大している外来種のマングローブの芽を抜き取ります。
マングローブは一般的には小さな生物の住処になると言われていますが、ハワイの固有種たちにとってはやはり外来種。もともとハワイの海岸線に植わっていたハワイの固有植物、特にハイビスカスがハワイの小さな魚たちには、もっと住みやすいのだそうです。
現代のハワイでは海岸近くでハイビスカスを見ることはかなり稀で、丘の上に咲く花というイメージですが、これはハイビスカスが生命力の強いマングローブに海岸線を追われたからなのだそうです。
そんな屈強なマングローブですが、海岸線に刺さったばかりの若芽は予想に反して、軽い力で気持ちよくスポッと抜けてくれます。どんどん抜ける楽しい作業でした。
もうひとつは、フィッシュポンドそのものの修復です。
用意されているサンゴ石などの自然石を修復箇所まで運びます。
作業場の近くには、こんな手作りのシャワー設備もあり、修復のための道具を洗浄するだけでなく、作業後の汚れは軽く洗い流すことができました。
近くの水路には、カヌープランツ(ハワイに移り住んだ先住民がカヌーで持ち込んだ伝統的な植物)でハワイで大切にされてきたタロが植わっていたり、
作業場の近くにはバナナが生い茂っていたりと、ハワイの自然の力も併せて感じることができた有意義な半日になりました。
<2023/04/13の情報です>
